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神田で130年の歴史を誇る老舗煎餅店の心意気。新商品が生まれるきっかけは遊び心と夫婦愛?1986年に「激辛」という言葉を流行らせた激辛煎餅でも有名な「神田淡平」は、明治17年創業の老舗手焼き煎餅の店。街に愛され、人に愛される懐かしの味から、遊び心あふれる新作まで、取締役副社長の鈴木 壮さんにオリジナル煎餅誕生の裏側を聞いた。 公開日 201827

おやつはやっぱりお煎餅だった?とはよく聞かれます()。おやつはもちろん、遊び道具もお煎餅でしたよ」と語るのは、神田淡平の6代目若旦那の鈴木壮さん。本社・工場のある葛飾で生まれ育ち、小学校低学年の頃には、神田西口商店街にある本店にたびたび来ていたという。


「祖母が店に立っていた当時は、私も一緒に接客をしていました。“壮くん”とか“お孫ちゃん”なんて呼ばれて、この町の皆さんに可愛がっていただきました」


幼い頃から見てきた神田はあたたかくて誇りを持っている町だといい、だからこそ仲間になると心強い町なのだそうだ。その町で実に130年以上もの間、手焼き煎餅一本で商売を続けてきた淡平の強みは、お米を粉にする生地づくりから手がけ、焼き上げる工程までをすべて自社で行っていることだ。


「生地から作るので、試作には事欠きません。面白そうな素材があれば生地に入れてみようかとか、まぶしてみようかというチャレンジが出来るんです。激辛煎餅が生まれたのも、遊び心からと言えますから」と若旦那。


1986年の新語・流行語大賞で「激辛」が銀賞を受賞するきっかけとなった淡平の人気商品「元祖 激辛煎餅」が誕生したきっかけは、若旦那の父である5 代目社長の鈴木敬さんが小学生の頃にさかのぼる。塾の先生からいたずら心で唐辛子煎餅を食べさせられた敬少年は、先生に一泡吹かせようとそれより辛い七味たっぷりの煎餅を試作してもらい、先生に復讐したのだそう。その後、祖母の推しもありこれを商品化したところ「山椒七味煎餅」は人気商品に。さらにある時、店を訪れたサラリーマンからの「会社の行事で使いたいのだけれど、今よりもっと辛いお煎餅は作れますか?」というリクエストに応えて、一味唐辛子だけで作ったのが「激辛・特辛子煎餅」の誕生につながった。アイディアと行動力、何より生地づくりから手がけるという強みが生み出した事例だ。


淡平ではこれ以外にもオリジナル煎餅が次々と生まれている。近年、注目を集めているのが、「今戸焼煎餅」だ。今戸焼とは江戸時代に栄えた焼き物で、浅草の土人形が有名。大正時代にいくつかの窯元が葛飾に移ったのをきっかけに、葛飾今戸焼として続いていたという。「葛飾に居を構える私たちがお願いして、葛飾の窯元で焼いた煎餅用の焼き鏝(コテ)を作っていただきました。この今戸焼鏝で一枚ずつ丁寧に焼いているのが「今戸焼煎餅」です」2010年の発売以来、確実にファンを増やしているという。


ここで、淡平の数ある煎餅の中から、売れ筋の味を聞いてみた。

「女性に人気があるのは「生姜煎餅」、お酒の好きな男性には醤油を二度づけした、かなり味の濃い「黒子煎餅」が評判です。甘いのがお好きな方には、ザラメ煎餅がありますが、当店の「琉球ザラメ煎餅」は、まろやかでコクのある黒糖から作る琉球ザラメを使用しています。そして大定番といえばやはり、胡麻煎餅ですね。私も幼い頃からつい手が伸びるのが胡麻ですね」


このほかにも、材料の仕入れ具合によって、店頭に並ぶ期間が少ない「特胡麻煎餅」や、さくらの塩漬けを使った春限定の「さくら煎餅」、受注生産の金箔をあしらった「ト金煎餅」などもあり、常時1618種類が店頭に並ぶ。その中で、気になる味を発見。その名も「シナモン煎餅」。この商品が生まれたきっかけを聞くと、


「これはパティシエだった私の妻のアイディアで生まれたシナモンシュガーを使った煎餅です。このほかにも、アイシングで煎餅に絵を描いた「デコレーション煎餅」も季節に合わせて販売しています」と少し照れながら、しかしオススメ度はマックスで紹介してくれた。それもそのはず、若旦那は2016年に元パテシィエの奥様と結婚された新婚さん。今後も煎餅と洋菓子の意外なマリアージュから、新たなオリジナル煎餅が生まれるかもしれない。


ちなみに、淡平のザラメ煎餅に琉球ザラメが使われているのは、5代目の奥様、つまり若旦那のお母さまが沖縄の出身というご縁からだそうだ。夫婦の絆も淡平の煎餅誕生の鍵を大きく握っているようだ。


神田という土地柄、淡平の煎餅は会社のお使い物として利用される機会も多い。「東京から離れた思わぬところで知っていただけていることもあってうれしいです。長年ご利用いただいているお客様を大切にしながら、海外にも煎餅の味、魅力を伝えていきたいですね。煎餅はおつまみとしてお酒にも合うので、イケると思います!」

6代目の目がキラリと光った。

(文:栗原晶子)
(撮影:山崎瑠惟)

      2018-2-8