国際食品工業展
 2002年国際食品工業展に行った。毎年東京ビックサイトで行なわれる。今年は一つ驚いた事が有った。産業用ロボットの最大手FANUCが食品業界対象に、アーム型ロボットのソリューションを行っていたのである。
 これまでアーム型ロボットは主に機械工場、自動車産業などにおいて数多く使われている。車体に一斉に噛みつく溶接ロボットを見た方も多いだろう。それが今日、対応出来る作業の多様性、柔軟性をいかして食品工場に、応用出来ないかと提案、市場拡大をねらう。
 近くに居たエンジニアーに話を聞いた。
 「今まで食品業界さまとの取引はありませんでした。今回初めての出展ですが、この業界にはたして需要があるのかさえもわかりません。まったくの手探りですが、最近のロボットはずいぶん進歩しましたし、何かお役にたてるのではないかと思います。」
 私はこの手のロボットはバカ高い価格だと思い込んでいる。価格はどの程度のものなのか?一番気になる点を聞いてみた。
 「意外と安いんですよ。本体250万です。」
 ”ソフトウエアーを含みますか?”
 「もちろんです。ただ実際に導入となると周辺設備がありますから、倍ぐらい掛かるかも知れません。」
 意外に安いと思いませんか。これはうかうかしてると我々、食品業界にもIT化、イノベーションの波が起きます。
 この道数十年のベテラン手打ちそば職人の手の動きをミクロン単位でまねるロボット。あるいは、手焼せんべいの生地の返し、キソ打ちのタイミングを正確にソフトウエア化するなどたやすいことでしょう。居酒屋の店端で ”イラッシャイ!”と威勢の良い焼鳥職人ロボットなんかも見てみたい気がします。
 現状はまだまだ人手の器用にかないませんが、同等かそれ以上と感じた時、いちはやく対応しようと思います。(まだまだ先の話でしょうね。)こんな面白い事人にやらせておくことはないでしょ。
 後日、日経産業新聞に次の様な記事がのった。FANUCに関するものなので紹介する。
 富士山を間近に望む山梨県忍野村。稲葉清右衛門名誉会長などファナックの経営幹部が執務する本館のすぐそば、地下10メートルの所に500平方メートルほどの広大な空間が広がっている。社員すらなかなか入れないこの地下室に未来の工作機械の開発拠点がある。超精密ナノ加工機。1ナノ(10億分の1)メートルレベルで工具を制御することを目指した次世代工作機だ。光通信機器や電子機器、医療機器分野などに組み込む微細部品の金型加工用に2000年3月に市場投入。1台1億円の高価な機械だが、これまでに5台を出荷した。ナノ加工機の開発に着手したのは1985年。ナノニークブームで訪れた微細加工ニーズの高まりで、国内中小企業などからも引き合いは増えている。この15年あまりにつぎ込んだ開発費は数十億円。「技術的な蓄積は十分にある。焦らず、しっかり育てる。」(ファナック首脳)。
 ファナックにとって待望久しい有望商品だ。逆に言えばそれだけ新規事業に結びつく開発案件が乏しいとも言える。現在、同社の売上げに貢献するまでに育った新規事業は84年に製品化した電動式射出成型機が最後。それも2002年3月期に100億円弱と計上したにすぎない。新規事業がなくても売上げを伸ばし、”経営利益率35%”という高い目標を掲げ続けてきたのがファナックだ。問題は稼ぎ頭の数値制御(NC)装置と産業用ロボットに見え始めた変調だ。
 「ファナックよ おまえもか。」
 今春、ある業界関係者が嘆いた。NCは、ファナックの創業事業で売り上げの約半分を稼ぎ出す屋台骨。国内では7割、世界でも5割という圧倒的なシェアを握る。そのファナックが値引き競争に積極的に参加し始めた。背景にあるのは最大のライバル、独シ−メンスの攻勢だ。
 安川電機と2000年に安川シーメンスエヌシーを設立。パソコンベースの制御プログラムの書き換えが容易な製品を投入し、国内工作機械メーカーに食い込み始めている。日立精機など国内工作機械4社に供給、
 「2002年度には倍増させる」(安川シーメンスの中尾栄一社長)。
 世界で2割のシェアを持つ産業用ロボットも安穏としていられない。ここでも安川電機が伏兵だ。安川は、自動車部品の組立てなどで使うアーク溶接用ロボットで国内シェア6割強。自動車ボディー向けのスポット、溶接用を得意とするファナックとは直接、競合することはなかったが、安川電機がここ1,2年ファナックの牙城に攻め込んでいる。
 きっかけは、ホンダ。それまで内製していたスポット溶接用の外部調達に転換。ファナックと安川の2社購買を決めた。これを機に安川は富士重工業やダイハツ工業など他の国内自動車大手にも入り込み始めた。
 「国内のスポット溶接用市場でシェアを2割にする」と安川の鼻息は荒い。
 「競合するのはホンダだけだから」と、ファナックは意に介さないが、煙たい存在が増えたのは事実だ。NC装置や産業用ロボットは成長に陰りが見える。切削工程が少ない燃料電池車が台頭すればNC装置を搭載する工作機械の需要は着実に減る。先進国の20分の1という人件費が強みの中国の台頭は、ロボット市場を脅かす。
 「日本などの先進国の自動車工場には200−300の溶接ロボットが入るが、中国はその10分の1しか納入できない」(川崎重工業)。
 世界の向上でロボットが活躍する途地は乏しい。市場ニーズの高い標準機を製品化し、忍野村で集中生産してコスト競争力を高め、世界に張り巡らせたサービスネットワークで顧客に食い込む。稲葉清右衛門名誉会長が構築したビジネスモデルは、NC装置と産業用ロボットという強力な標準機があったから生きた。その果実が2002年3月期に連結売上高(2、164億円)の約2倍の4,200億円に膨らんだ手元資金だ。しかし両製品にかつてほどの勢いはなく、業績は急速に陰りを見せている。2002年3月期は、主力の工作機械メーカー向けのNC装置が大幅減収、連結純利益は32%減少した。2003年3月期も純利益は3割近い減少を見込んでおり、配当は前期に続いて減配となる公算が大きい。期待のナノ加工機も月数百台以上の生産量は見込めそうもなく、次なる標準機に位置づけるには力不足。ペット型や二足歩行型分野に参入する意思も同社には「ない」(稲葉副社長)。
 JPモルガン証券の黒田真路・株式調査部アナリストは、
「4,200億円の手元資金を有効に活用できていない」と指摘。 株価も99年につけた高値14,900円の4割の水準。巨大な貯金箱に対し、市場の目は厳しい。
 以上の様にFANUCにも逆風が吹きはじめた様です。自動車工場以外の新分野開拓が急務なのかもしれません。