窯業

 セメント業界は国内の集約が一段落し、舞台は強豪企業による世界競争に移行している。
  2001年には世界3位の仏ラファージュ、同2位のメキシコのセメックスが日本での事業展開を本格化し、成長市場であるアジアで影響力を強めようとしている。一方国内市場の4割を握る最大手の太平洋セメントも、2000年に韓国の双竜洋灰工業を事実上傘下に収めるなど対応に怠りない。
  とはいえ、課題もある。双竜は1997年に始まったアジア危機の影響を受けて業績不振が続く。その結果、太平洋セメント収益も悪化。2002年3月期は190億円を超える持ち分法投資損失を計上、連結経常利益は26億円と前年比87%減の水準となった。セメント事業の国内環境は今後も厳しいことから、海外事業の強化は欠かせない。とはいえ、セメント業界が国内事業で収益性を高めるための方策をすべてやり尽くしているとは言えない。その1つが流通構造の見直しだ。
  メーカーの国内出荷価格は国際価格より低いが、顧客の仕入れ価格は国際価格より高い。「流通構造が複雑なことが原因」と太平洋セメントの鮫島章男社長は言う。メーカーから顧客に渡るまで、複数の販売店や卸業者など経由する。複雑な流通構造を見直すため、セメントメーカーは系列商社の再編や、メーカー出荷価格の簡素化、販売手数料の見直しなどに着手しているが、まだ道半ばで終わっている。
  一方、ガラス業界は、板ガラスで世界1位の旭硝子を中心に2位以下の日欧企業連合による国際競争が本格化する。世界2位の英ピルキントンは日本2位の日本板硝子と、世界3位の仏サンゴバンは日本3位のセントラル硝子と組んで争う構図となる。
自動車の世界再編に対応
 2000年以降、日欧企業による再編が進んだのは、自動車業界の国際再編に対応するためだ。部材の世界調達が進む中、自動車用ガラスも例外ではない。日本板硝子とセントラル硝子は、ほぼ国内でしか事業展開してこなかった。一方、ピルキントンとサンゴバンは日本市場だけが未開拓。この補完関係に日欧の思惑が合った形だが、日本側が欧州企業に食われた感も否めない。日本板硝子とセントラル硝子の両社は、現在起きている再編劇をいかにチャンスへと変えるかが課題となる。
  これに対し、旭硝子は1981年にベルギーの板ガラス会社に資本参加、88年には米国の板ガラス会社を買収と、世界のガラスメーカーの中で先陣を切って、グローバル化を進めてきた。同社の板ガラス事業の優位性は当面、揺るぎそうにない。今年4月には、それまでの本体と買収子会社による日米欧3極体制から、日米欧組織の一体運営に移行。真のグローバル経営体制を築きつつある。
  ただ、課題もある。欧米の板ガラス事業の売上高営業利益は10%を超えるにもかかわらず、国内収益性が低いことだ。原因はセメント業界と同じ。「流通構造の複雑さにある」と旭硝子の和田隆常務取締役は言う。
  セメント、ガラス業界ともに、海外事業の強化の前に、国内問題の一掃が不可欠だ。