予約に応じ料金変更 日経産業新聞 2002年7月18日

 ホテル・旅館業界ではインターネットを利用した宿泊予約が急速に広がっている。ホテル各社は自社サイト上で予約コーナーを設けたり、宿泊予約の専業サイトを通じたりして客室を販売している。予約状況に応じ機敏に料金を変更できるため、集客確保の大きな武器となっている。ヒルトン東京・(東京・新宿)はネット予約をいち早く利用を始めたホテルの1つ。自社サイトとヒルトングループが運営する「ヒルトン・ドットコム」、宿泊予約サイトの3ルートで対応している。日本語の自社サイトでの予約件数は月間約1000件で前年比2倍の水準という。プリンスホテルは全国のコクド・西武グループのホテルのほか、国内最大の44カ所のゴルフ場の予約ができる体制を整え、利用者の人気を集めている。ネット予約の普及を支えるのは宿泊予約専門サイトの台頭だ。マイトリップ・ネット(東京・港)が運営する「旅の窓口」は今年3月末で国内のホテル・旅館9502軒、海外2784軒が登録する国内最大規模の予約サイトだ。2001年度の宿泊予約数は483万件に上った。今年度は815万件に引き上げる計画だ。従来はビジネス客を中心に利用を伸ばしてきたが、今後はレジャー関連のコンテンツ(情報の内容)を充実、利用者のすそ野を広げる。ホテル各社がネット予約を拡充するのは、客室の稼動率に応じ柔軟に料金を変更できるメリットがあるためだ。予約が低調な場合では、正規料金より2、3割安く客室を販売する。先日終了したサッカーのワールドカップ(W杯)を巡っては、海外宿泊客の大量キャンセルが生じた。この際、空室を抱えたホテルが宿泊予約サイトで客室を割安に販売し、顧客を確保したという。「W杯の場合、キャンセル通知が4月末と直前で、旅行会社経由での集客が難しかった」(大手宿泊予約サイト)。このため、一部予約サイトにはホテル側から集客を依頼する声が相次ぎ寄せられたという。ホテル業界にとっては宿泊予約サイトは旅行会社と並ぶ集客ルートとして定着しつつある。