| 紙幣に埋め込み検討 日経産業新聞 2002年7月18日 |
金融分野の情報技術(IT)化の進展は、半導体メーカーにも商機をもたらす。データの記憶や処理を狙う半導体チップに新たな需要が生じるからだ。日本の金融機関向けで今年、需要が急速に伸びそうなのがクレジットカードなどに内蔵するマイコン。2〜4ミリ角のチップに中央演算処理装置(CPU)やメモリーを混載している。従来の磁気方式だと講座番号や暗証番号を記憶させるのが精いっぱいだった。マイコンならポイントカードなどの機能を容易に付加できるうえ、セキュリティーも高まる。年間20億〜30億円と見られる国内市場は当面、倍々ゲームで成長する見通しだ。回路自体は線幅0.35マイクロ(マイクロは100分の1)メートルと数世代前の加工技術を使う。だが、「カード読み取り機に指紋検出機能を持たせ、連動させれば確実な本人確認システムができる」(日立製作所ICカード本部の倉員桂一本部長)。用途はアイデア次第で広がる。暗号技術などのソフトではなく、チップ側でセキュリティーを高める試みも始まった。三菱電機は多結晶シリコン薄膜トランジスタ(TFT)を使う「人工指紋チップ」技術を確立した。TFT中の結晶粒のばらつきにより、同じ信号を入力しても出力結果に違いが出る性質を利用、個々のチップの識別に使える。結晶粒は人為的に制御できないため複製を作るのは絶対に不可能という。大規模集積回路(LSI)の一部に多結晶シリコンTFTを造り込めば、チップを容易に特定できるうえ、データ変更は不可能。携帯電話機など搭載機器の製品番号を出荷前に取得して保存すれば、電子決済の安全性が高まる。カードによる課金や電子決済ではなく、紙幣そのものにICチップを内蔵させるという構想も出ている。日立は「ミューチップ」と呼ぶ記憶容量128ビットのROM(読み出し専用メモリー)を備えた無線ICチップを開発。大きさは0.4ミリ角と世界最小で、すでにユーロ紙幣に埋め込む構想が浮上している。半導体の新市場としてはデジタル家電などが注目されるが、工夫次第では金融分野も大きく育つ可能性を秘めている。 |