謎の志野の湯飲み | ||||||||||||
首里城公園から、安里に向かう長い坂道を歩いていた。 仕事で沖縄へ来ているが、最終日の今日はやる事が無くなり、観光と決め込んでいたのである。 バス停を目指して歩いたが、散歩が心地良くもう一つ先のバス停まで、更にもう一つと、いつの間に栄町まで歩いていた。 ひめゆりの通りとの大きな交差点の左側一帯は、栄町市場になっている。 腹がすいていたので、ここで腹ごしらえでもしようと考えた。 沖縄は町のあちらこちらに市場がある。 卸売りが一般的なものかも知らぬが、私の様な一見の客でも相手にしてくれる。 沖縄そば屋や定食屋は島ならではのメニューも多く、安くて旨い。 腹ごしらえが済んで市場を散策してみる。 奥にリサイクルショップがあった。 軒先まで商品が山積され、店の中は更にカオス状態。 手前に焼き物の棚があり。アイテムごとにビニール袋に入れられ、うず高く積まれている。 下手物の中にあって1つだけ光っている物がある。 志野焼の湯飲みなのだが、良い物だ。 3個袋に入っている。1個200円の様だ。面白いから買ってみた。 600円を用意してレジに持っていくと、3個で200円だと言う。少し得をした気持ちになって店を出た。 私の父は焼き物が大好きでいくつか世に名品と言われる物を残している。 その中に、岡部嶺男の志野焼きの湯飲みがある。 今日手に入れた物はこの湯飲みに良く似ている。 もちろん写しなのだろうが、普段使いにはとても良い物だ。 3個200円だらか家内も文句あるまい。それにこの湯飲みはまちがっても3個200円なんて代物ではない。もっと上物だ。 東京に帰ってきた。 思い出した様に沖縄で手に入れた物と父の残した志野の湯飲みを比較してみる。 ここで家は大騒動。 これはどう見ても岡部嶺男の作品である。 父の物程良くはないが、写しの範疇を越えている。 よく出来たニセモノかとも思うが、200円で売ったのでは意味がなかろう。 ロクロのクセ、薬の掛け方、薬の質、作風、サイン、どれをとっても岡部の物だ。 家内などはこの3点を洗濯物でくるんで、宅急便で送った私を責めはじめた。 さてさて、最終的に鑑定してもらおうか。本気で東京12チャンネル、"なんでも鑑定団"に出演させてもらおうかと思っているのですが。
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