雨過天晴

中国の大自然をさして北を白山黒水、南を青山緑水と形容します、悠久の大河と国境の山脈を連想させる見事な表現ではないでしょうか。
そして雨過天晴とは華南地方の雨上がりの抜けるような青空のこと、昔から最高に美しい色として使われた言葉ですが本来は南宋時代の龍泉窯の青磁の色を指して使われる言葉です。
文化や文物は地域の自然に意識的にあるいは無意識に影響を受けます、龍泉青磁が陶磁器の最高峰として評価されるのは中国華南地方の美しい青空がそのまま青磁の地肌に写し込まれたからではないでしょうか。
前にも後にも南宋時代の青磁を上回る雨過天晴は実現できていないそうです。

写真は沖縄県の壷屋焼、大正から昭和初期のもので骨董というには新しすぎますが口に使われるコバルト釉の何と美しい瓶でしょう、コバルトブルーとはこの事を言うのです。
そしてトロピカルな沖縄の海と大地をそのまま映しとったような無作為の美しさに感動します。
普通陶磁器にこうした色使いはしないものなのですが、この作品は何の違和感もなく自然に溶け込んできます。
そして沖縄の大地に育った百年前の無名の陶工に思いをめぐらす事になるのです。





                                  2010−1−19