忠孝酒造訪問記
平成17年11月 沖縄県の忠孝酒造を訪問した。
沖縄の地酒 泡盛を製造販売する会社である。
忠孝は泡盛の真髄は古酒にあるとの信念から古酒熟成に最適の甕を自社生産することに特徴がある。
世界広しと言えども南蛮荒焼き甕まで自社生産する会社は忠孝をおいて他に無い。
オンリ−ワン企業であると同時に優良なブランドイメ−ジを構築した。

南蛮甕の研究に取り掛かったのは大城会長である。
平成元年に試作に取り掛かり、一升 三升 五升甕入りの古酒を発売したのは平成4年であった。
思いのほか難航し腱鞘炎に悩まされながら多額の投資をしたと言う。
この間 甕の研究開発に予算を取られテレビCMを打つことが出来ない時期もあった。
多くの人々に非難されながらも信念を曲げることが無かった不屈の闘志が実を結ぶのに4年以上の歳月が必要だったのである。
酒類の販売量と宣伝広告費は有意な正の相関関係がある、これは今やマ−ケティングの常識である。
簡単に言えば良く売れている酒は宣伝をしていると言うことだ。
MBA流マ−ケティング理論から見れば愚行にしか映らない時期を耐え抜いたことは会長の精神力 信念以外の何ものでもない。

忠孝南蛮荒焼きはガス窯使用にもかかわらず独特な窯変を生み出し本業の陶工さえ舌を巻く出来栄えである。
他の陶工には作り方が解らないらしい、事実ガス窯でこれほどの窯変を生み出す作家は他に無い。
既存の常識にとらわれない企業経営者ならではの試行錯誤が実を結び極めて芸術性の高いものになったのである。
平成3年3月 大城会長は沖縄県の主催する陶芸部門で入選を果たしている。
忠孝酒造は酒類製造販売の世界に芸術を持ち込んだ稀有なエクセレントカンパニィ−と言えるだろう。

下の写真を見ていただきたい、沖縄県立博物館にて許可を得て撮影したものである。
沖縄の古陶を展示しているブ−スだが、これを見たとき大城会長が目指した世界が理解できたような気がした。
泡盛製造を母体としながら、沖縄の伝統文化への誇りがより良い物作りに結びついた、この酒は祖国沖縄を愛する心が作り上げたものであることが良く理解できたのである。