遠い国 沖 縄
 カメラのタカチヨが1999年5月全国誌「ラピュタ」に紹介された。
他店にはないめずらしいカメラ達も合わせて紹介されていたので全国からの問合せにさぞかしお忙しい毎日であろと、陣中見舞の意味も含めて今年6月カメラのタカチヨを訪れた。御主人はあいにく留守であったが、顔見知りの奥様が対応して下さった。
「ラピュタ見ましたよ。最近はお忙しいんじゃありませんか」
「いやそれほどでも」そんな奥様の顔はほころんでいる。
ご謙遜で商売繁盛のことと早合点した。
 カメラのタカチヨにはアメリカ統治時代に造られた沖縄製カメラや、地の利を生かして仕入れる自衛隊、米軍放出の内地では目にする事の出来ないカメラが数多い。こういった物達も誌上おいて紹介していたから、全国のカメラマニアによる問合せは引っ切り無しにかかり、開店と同時に客足も絶えないであろう。非売品を売ってくれとすごむ客も後を絶たないのではないかと思っていた。
ところが、話しをよくよく聞いてみると、雑誌を見たと言う電話の問合せが3件あったきりで、後はまったく以前とかわりがないと言う。さきほどの奥様のうれしそうな笑顔は、たんに雑誌に出たからと言うだけの物であった。意外であった。これがもし東京のカメラ店であったなら事情がまったく異なっていたことは間違いない。私はつくづく、やはり沖縄は遠い所なのだと感じた。クラシックカメラマニアは大都市に集中している。日本の最南端まではなかなか手が回らないようである。私は最近スイス製高級腕時計エテルナの保証書を目にする機会を得た。本年度の新作に添付されている物である。ご覧の通り、世界各国のサービスセンター所在地の案内にはOKINAWAがJAPANと別枠になっている。OKINAWAの枠にはDesco(Japan)Ltd.,see:Tokyoと書いてあるのがお分かりであろうか。スイスの有名な時計メーカーのこの認識こそが、今日の沖縄の置かれている立場を端的に物語っている。