沖縄になくてなはらない食材である。
ゴーヤーチャンプルーの中にも入っている。
沖縄の大衆食堂に行けば必ずあるメニューがポークタマゴ。
ポークランチョンミートと目玉焼の定食である。
最近は本土でもよく目にするアメリカ型の肉の缶詰な訳だが、
その開発物語に意外な一面を発見して驚いている。
沖縄でこれだけ支持されているランチョンミートだが生みの親アメリカ人はどう見ているのだろうか。
以上の事が気になりだした琉球大学の金城須美子先生が、幾人かのアメリカ人に尋ねている。
一言で言えば、あんなまずい物をアメリカの食文化などと思わないでほしい。
あれは軍用食でまともな人間の食べ物ではない、と言う事だそうだ。
アメリカ人をして、この認識である。
このあたりは、沖縄タイムス社刊琉球大学アメリカ研究会著「戦後沖縄とアメリカ」に詳しい。
面白いから是非読んでみてほしい。
50歳代のあるアメリカ女性は、戦争中の生肉不足の折の代用品で
ピンク色の肉は得体の知れない物といったイメージがあり、未だに食べる気がしないと言っている。
40代の男性はあれは軍需物質であり戦時の非常食であって普段食べる物ではないと言う。
軍人以外のまともなアメリカ人がこんなふうに思っている食べ物を
ウチナーが喜んで食べているのかと思うと少々悲しい気持ちになる。
しかし、考えてみれば仕方のない事である。
終戦直後の飢えた県民には、これでも目の玉が飛び出る程の御馳走だったのに違いない。
この時のDNAが未だに県民の中に生きているのだ。
日本に輸入されているランチョンミートの90%は沖縄で消費される。
これはもう沖縄県が一人で輸入している様なものである。
金城先生は著書の中でこう言っている。
「アメリカ文化との接触が、太平洋戦争の最も悲惨な状況下では、
しかも勝者と敗者の間では対等な文化交流ではなかった。」
似た様な事は韓国でもおきている。
米軍によって持ち込まれて韓国人はすっかりランチョンミートが好きになってしまった。
ホーメル社によると韓国は英国に次ぐ大きな市場だそうである。
ランチョンミートの歴史を「戦後沖縄とアメリカ」より抜粋する。
Pork Luncheon Meatとは調製された豚肉の缶詰のことで、食肉加工品の一種である。
名称はLunchとMeatを合わせた造語だそうである。
Luncheon Meatの歴史は、米国のGeo.A.Homel社によって開発された
Spam Luncheon Meatの製造に始まった。
これは第二次世界大戦の前に、米軍当局から保存が容易で
手軽においしく食べられる肉を作ってほしいとの要請を受けたH社が
世界に先駆けてスパムを開発したのが最初だという。
Homel社の資料によると、創設者の息子ジョイ.C.ホーメルが、ぶつ切りにした豚の
肩肉とハムを混合してまとめた特有の製品Spamを開発し、
スパム・ランチョンミート製造の先駆者になった。
1937年、ミネソタ州のオースチンにある本社工場で製造が始まった。
冷蔵庫がいらない画期的な製品で、兵食として必要な特性をもっていた。
豚肉は保存が出来なかったが、ランチョンミートは戦地でも
新鮮さを保ち、兵士の栄養補給が出来る一石二鳥の食品"
The Miracle Meat"であった。
当初から軍需用の食料として開発されたランチョンミートは、
缶の形も兵隊の四角い背嚢に無理なく納まるように考案されたと言われる。
以上の様に、軍需物質である事を裏付けている。
そう言えば思い出した。
アメリカのTVトーク番組でコメディアンがSpamを連呼していた。
お客様はみな大笑いである。
私にはさっぱり理解出来なかったが、後に誰かに聞いた。
Spamとは最悪と言う意味を持つらしい。
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