自 衛 隊 員
 那覇国際空港を国道58号線沿いに市街へ向うと、ほどなく左側に那覇軍港が見えてくる。近々民間に払い下げられるようだが、ベトナム戦争当時は、無数の自走砲でうめつくされていた。
 その反対側に大野山公園がある。その公園の前に小さなクラシックカメラ店があった。クラシックカメラを扱う店は、沖縄ではめずらしい。聞くと店主は、琉球新報のカメラマンであったと言う。その経験からか、趣味が高じてか、クラシックカメラ店を始めることになったらしい。東京銀座あたりで鍛えられた目には、さほど目新しい物はないのであるが、それでも一目見て異彩を放つ物がある。キャノンFTbなのだが右肩に紋章が刻られている。海上自衛隊の刻印であった。よく見ると機類はFTbn、1973年の製造である。沖縄本土復帰が1972年5月であるから、翌年早々他の自衛隊員とともに、配属になったのであろう。ボディはなんでもないクロームメッキの市販品である。そのことがかえってこのカメラの魅力を増している。これが、緑色であったり、過剰な装備を身にまっとっていたなら、映画ランボーのシルベスタスタローンみたいでうさんくさい。自衛隊員も元はただの民間人であったのだから、カメラだって入隊前はただのカメラであってほしい。
今は静かに余生を送るこの老兵も、かつては勇敢な兵士であったことは彼のその誇らしげな紋章が物語る。店主を上原降昭さんと言う。数年前に、自衛隊に出入りしていた仲間、NTTの森さんが、備品管理の隊員から譲り受けた物を手に入れたらしい。あやうく捨てられる所を、間一髪救出したとのことであった。経歴に問題は無い。
似たような物を銀座、新宿あたりで見つけたら、気をつけたほうがよい。彼らは自衛隊員のふりをしているが、実は旧ソ連か、中国、あるいは墨田区あたりからのスパイである可能性が高い。民間人でないだけに注意が必要である。