スイッチの感触
最近の電機製品のスイッチの感触がおしなべてパソコン・ライクになって来たとは思いませんか?
日常生活の中で操作する事のある機器の大半が家電製品なわけですが、これらの操作が全て似かよった物になってきていると感じているのです。例えばTVなど少し前の物は電源スイッチなどグイっと押し込むものであったり、パチンと引き出すものだったですよね。ところが最近の物は、おしなべてストローク数ミリ以内のフェザータッチです。重量をあつかう洗濯機であってもこのフェザータッチ操作です。(このフェザータッチの元祖はポルシェ・デザインのコンタックスRTSのシャッターボタンだと思っているのですが、それ以前に何かお知りでしたら御指摘下さい。)
更に古いTVはバチバチと回転させるチャンネル操作でした。あれがよく壊れたものです。少しづつずれていきて、しまいには5ch表示で4chが映ったりしたものです。末期にはスポンとツマミが抜けてしまうようになり、何度も差し直したものです。そう言えば初期のVTRには、あの回転式チャンネル切換器が付いていたのを思い出します。ラジオのチューニングは、高級オーディオの物も小型の中級機もみんなアナログダイヤル式のバリコンでした。物差しみたいな目盛り表示に赤色の針を合わせるやつです。
(私の息子は見た事がなくめずらしがっていました。)千円以下の激安ラジオは今でもこの方式ですが、デジタルチューニングよりもこちらの方が使いやすいと思うのは私だけでしょうか。話しが変わりますが、息子はカメラのフィルム巻上げレバーがなんであるか友人が知らなかったと言っていました。そう言えば最近のカメラには巻上げレバーがありません。ちなみに私の息子は1975年製のキャノンFTbが愛機なのです。更には最近の子は、ピントを合わせなければ写真が撮れない事を知らないのかも知れません。以上の諸々の話しも、たんなるノスタルジーたいした問題ではないのかも知れません。
他のエッセイで再三述べたように、家電製品がパソコン・ライクなのは、その作動をソフトウエアーが行っている理由が大きいと思うのですが、使いかって、使用感までもがパソコン・ライクなのは、部品の共通化の産物でしょう。全ての物の使用感がIBMのキーボードの様な世の中を少しつまらなく感じるのは、カメラおたくオヤジの性なのです。本来どうでもいい事が、みょうにひっかかるのです。
ところでスイッチの感触が官能的で心の琴線にふれる物と言えば、これはもうはっきりとライカです。(シャッターボタンはスイッチです。)私としては、M4型がお気に入りですが、M3型がよいという人も多いようです。大人の趣味としてはけしてお金のかかる部類ではないでしょうから。(ボディー中古で15万前後でしょうか)
ぜひ一度おためしあれ。
最近の機械の操作感の対極にあるのが、今お話ししたライカと我家のオンボロ、ジャガーです。ジャガーは何を操作するにもそこそこ力がいると言う点が今や貴重です。いやいや力がいると言うのは誤解を生みます。これは作用と反作用、絶妙なテンションで押し返してくる感触と言えるでしょう。このあたりはさすが産業革命の国、英国です。機械作りにかけては年季が違います。
ジャガーはライカによく似た車なのです。
またまた話しが飛んでしまうのですが、最近私は友人のお付き合いで、ヤナセのショールームに行きました。そしてベンツSクラスを見たのです。ドアーを数回開閉して感心しました。友人は私に、
「どう、いいだろう」と言います。
私は言いました。
「すばらしいね。この車はすばらしい。このドアーの音はライカの60分の1秒だ!」
友人はその場に立ちつくしてしまいました。

PS:近年のセンサ技術、マイクロエレクトロニクス。マイクロマシンなどの発展は、知的判断メカニズムを随所に応用した、自律規範型未来工業システムの可能性を現実のものにしつつある。微小なセンサ類や動作機構を材料内に組み込み、外力や損傷を検出し能動的に外的環境に適応する知的材料、構造システムの開発は、これまで確率論的に取り扱われてきた外力や強度を、常時モニタリングすることによりいわば確定論的に取り扱う事を可能にする。このことは構造物の信頼性向上に資するばかりではなく、重大事故の防止、省資源、省エネルギー効果より、材料、構造の環境調和性を高める技術としての側面をもつ。また複合材料を中心とするホスト材料へのセンサー類(光ファイバーセンサ、マイクロセンサ、圧電素子、形状記憶合金など)の組み込み技術、ヘルスモニタリング技術、制御技術などを含む総合的な材料利用技術の研究開発が行われつつある。さらにこれらを高度に応用する事により、スマートストラクチャデバイスシステムと呼ばれる、センサ・信号処理機能およびアクチュエーター((動作機構)を内在する構造もしくは装置の出現を可能にする。これらは機能性材料および機能性流体を含むシステムのモデリング、複合材料の最適設計、形状、制御同時最適化、連成問題のモデリング、構造のヘルスモニタリングシステムなどに応用することができる。同様に建築物においても将来的に自己適合型建築、すなわち、生物体と同じように、設備系が自己完結した建築物、外部からエネルギーをもらって自分自身で成長してゆく建築物、損傷を受けたら痛みを感じ、自己再生を行う建築物、などを目指していくことが必要である。このように知的な自律規範メカニズムを内在した素材、デバイスは、人間の多様な要求を高度なレベルで実現する可能性を秘めている。
中島尚正 編 「工学は何をめざすのか」より