トウ小平

 市場対国家 ダニエル・カーギン著より
 トウ小平には、革命家、兵士、共産主義者、政治家、改革派、長老など、さまざまな役割が割り振られてきた。しかし、1990年代、新しい役割がつけ加えられた。実業家である。上海の新聞は、トウ小平に関するあまり知られていないエピソードを紹介している。20年代初め、パリで共産党員になった当時、中国豆腐店という食堂を開いたという。トウ小平を革命の地下組織に勧誘した「兄」、周恩来のたっての希望だった。ここでも、統率力を発揮した。豆腐はおいしく、食堂は盛況で、メニューを増やし、客席を増やしている。ここから得られる教訓はあきらかだ。模範的な共産党員であり、熱烈な愛国者であり、中国の統一と、それにふさわしい富と国力の増強を模索する指導者が、同時に、消費者が買いたいと思う品質の品物を提供する実業家にもなりうるのだ。この融合こそ、トウ小平が中国の最高指導者であった20年の間に成し遂げようとしたことだ。