田中時計店 4
 「ヨソが投げた様な物ばかり持込まれるね」 (古すぎて修理をあきらめたものばかりと言う事です)
店主がうれしそうに話す。
戦前の腕時計を前に腕組みした店主は外をながめていた。
私は突然の真夏の夕立に行く手を阻まれ、田中時計店に避難させて頂いていたのである。この時期は7時過ぎまで明るいのだが、4時だと言うのに外は真暗である。大粒の雨がここ2、3日の猛暑を洗い流していた、
 掘り出し物があると言う。
押入れを整理していたら出て来たそうだ。
「娘さんが喜ばないかな」
見ると、白雪姫のキャラクター目覚し時計である。
“ディズニータイム”と銘打たれた精工舎の物で、おそらく40年弱前の物であろう。オレンジ色のスケルトンボディーは、中で脈打つ機械を見る事が出来る。最近この手のスケルトンデザインが人気な様だが、(iマック以後の流行でしょうか)これは、40年近く時代を先取りしている事になる。いや流行は繰り返すと言うから、かつてもこうしたデザインが流行したのかも知れない。中の機械は真鍮製の頑丈、武骨な物で、本来見て美しい物ではないが、そこはオレンジフィルターの役目をはんたすボディーシェルが美しく演出してくれる。
オーバーホールしてから売ると言う。
また楽しみが増えた。