昭和七年の漆器揃


ちょっと良いものを手に入れた、昭和七年に作られた漆器の揃である、入手場所は木曾の奈良井宿、デットストックであった。
本膳のセットで当時としては新婚家庭などでとりあえずの生活必需品として購入されたものなのであろう。
何故昭和七年の物と解るかと言えば断衝材として使われている新聞の記事が1932年のロサンゼルスオリンピックの話題で満載だからである。

良い漆器である、一番上の写真の印に在るように器の縁は布着せをして強度を高めた堅地で産地不明だが輪島の物だろう。
今日では伝統工芸として認定され保護され尊敬されている技術が日用品として広く一般に使われていた時代の物なのである。
だからと言う訳ではないが今なら人間国宝に指定される技量を持つ人たちの作品なのに、まったく作者の顔が見えてこない。
まるで工業製品の様に沈黙している。
作品ではなく製品なのだ。
物は語らない、しかしそこに時代の空気が見えてくるのである。













      2012−7−20