拭き漆の椀

昭和七年製造の漆器揃えに続いてもう一つ漆器製品のお話です。

「これは本物だね!!」家内が思わず声に出しました、拭き漆の椀です。
知るきっかけはTVの旅番組でほんの数秒写った椀が目に焼きついて、確信を持って探し当てた物です。
見た目は何て事ありません、しかし使ってみればもう他の物にはかえられない、同じような物など数あれど月とスッポンです。
絶妙な形、大きさ、重さ全てがとても優しくて使いやすい、製作者の人格が伝わってきます、特に高台内のアールは手に吸いつくようで持ちやすいことこの上ない。(ちょっと驚きますよ!!)
この碗がどの程度の物なのか一年かけてデパート巡りをしましたが天下無双なり。

一年前の事になります、電話番号を知り写真の碗を送って頂くようにお願いしました。
快く承諾くださいました、代金の支払い方法を聞くと
「先に送りますから気に入ったらお金を送ってください」とのこと、もちろん礼状を添えて送金しました。
本物の民芸に出会いました、これ程の物とは二度と巡り会えない様な気がします。
後日、形が良いですねと言うと「百年ぐらい使える物だから形よりも使いやすさが大切、使いやすさと丈夫な事が大切」とお話し下さいました。
なるほどそのとおりですね、形には流行が有ります、今日良いとされた物が百年後に良いとは限らない、しかし使いやすさは永遠です。
この事を作者は本能的に感じているようでした。









前回の「昭和七年の漆器揃」と今回のブログは並べて掲載したいと思いました。
両者の違いを感じて頂ければ民藝思想のなんたるかが解る様な気がするのです。

      2012−8−7