大友楼

富山の友人に言わせると、「富山湾で取れた魚を食べて育った私には築地の魚は美味く感じない」との事、海の幸、山の幸に恵まれ文化的にも優れた加賀百万石ですからそれも頷ける話、それじゃあと言う訳で今回の金沢旅行は一流処の料亭を入れた贅沢なものになっています。
今宵は大友楼、加賀藩の時代から料理番を仰せ付かった由緒有る家柄の有名料亭です。
ところである識者は「加賀料理とはいかなるものですか」との問いに次のように答えています。
「加賀料理とは加賀地方で取れた食材を伝統的な和食の調理法で調理し、それを九谷焼、輪島塗、山中塗のみの器で供する和食会席です」と答えました。
まことに見識ある意見と感銘を受けました、非常に客観的で冷静な意見に感じたのです。
過度に味について語ればそれぞれのお店の個性や個人的な好みに関して多くの説明を前提としなければなりません、それを汲み置いた上での話になります、それに対して上の説明は少なくとも加賀料理以外にはありえない特徴を端的に物語っています。
これを私なりに理解した上で(理解できているか大いに疑問ですが)大友楼のお料理を紹介いたしましょう。



金沢といえどもなかなかお目にかかれない木造二階建ての設え

エントランスはベンガラの土壁が艶かしい街屋の風情

堆金の漆塗りは時代がありました

エントランスを抜けて個室に案内されます



加賀藩前田家の紋が入る瓦は金沢城有りし頃の物と直感しました、こうした所が老舗料亭の凄いところ。



古九谷風汲出に根来塗りの様に詫びた菓子受け、菓子は加賀伝統の落雁です。

奥の吉田屋風金襴手をご覧ください!!
碗は京風の味の吸い物、もちろん輪島で供されます

鰤の刺身はこれも吉田屋

木米の徳利に栄える八寸↑↓ なまこは流石に本場の味



のどぐろの焼き物、絶妙の塩加減です
使いこまれた金襴手は昨日今日の物ではないですよ、こちらの方も良い味わいでした。

背開きした鯛におからを詰めて蒸しあげたもの、鯛の旨味がおからに移った未体験の味でした。
加賀料理は全体に甘口ですが仲居が言うには御金持の加賀藩の事、当時とても貴重な琉球の砂糖を島津藩経由で輸入、九州からは北前船でもたらされていたとの事、石川県は今でも砂糖を大量に使う懐石用和菓子の消費量日本一ですがこうした歴史的背景があるのですね、もちろん和菓子の消費が多いのは文化国家、加賀藩の茶道の隆盛も忘れてはいけません。





じぶ煮です、あまりにも有名な加賀料理ですね、ただこのじぶ煮見た目から味を想像する事が難しいと思うのですが簡単に説明しますと、出汁の利いた甘味噌で煮た鴨肉を山葵で頂く、材料と味付けの相性が大変良くはっきりした味で、とても美味しい料理です。
独特な形のじぶ煮碗で供されます。



締めは毒抜きしたフグの卵巣をおじや風に、舌にピリピリと刺激のあるスリリングな味わい、ピリピリが程良い薬味になって大変美味しいものでした。
大聖寺の染付に古九谷風亀甲紋の皿、有名な意匠です。

   2015-5-4