型おくれ
 家電製品、安売りの店の目玉商品に型おくれがある。
 新型発売の為、旧型がデットストックにならない様に破格の安値で売り逃げる、在庫処理の商法である。
 昔からある事で、自称秋葉原通の私は、ず〜とこれねらいである。
 一時期、大変な話題になった渋谷の城南電機は、これら型おくれを現金で大量に仕入れる事により自他共に認める安売り王となっていった。
 最近、秋葉原をうろついていて思うのがだが、激安の型おくれ品が昔ほどないように感じる。
 デジタル時代になって造りすぎによるムダを極力排除する生産計画が効を奏しているのだろう。
 製造側は、造り上手になり、小売店も売り上手になった。造れば売れた時代は、大量生産第一主義で、なにしろ造る事そのものが大切であった。
 巨大なベルトコンベアー上を流れ作業で人間とロボットが協力しながらの大量生産は、記録フィルムを見る様で今やなつかしい。
 もっとも自動車メーカーは、相変わらず上記の様な作り方でしかも驚いた事に80年代以上の熱気を帯びているが、私には時代遅れな工場に見える。
 70年代は、在庫管理よりも造る事の方が優先されていた事例は沢山ある。
 例えば、爆発的に売れた業界初のコンピューターカメラキャノンAE-1の出現前夜、キャノンFTbはまったく売れなくなり倉庫に山積みになった。
 それでも部品があるからと造り続け、最後は小売店による投げ売りが起きた。
 少し意味は違うが、ニコンF2はあまりに精密かつ複雑すぎて、造れば造る程、赤字を出していたが、ニコンはブランドのプライドから10年間造り続けたと言われている。
 造る事そのものが尊い時代だったのである。
 それでも会社は、大きくなったし、全体として利益を上げた。
 世の中が高度成長の時代は、それでもよかったのである。
 今日、セル生産だ、ジャスト・イン・タイムだの大合唱。
 仕掛品も在庫も0を目差す時代である。
 製品寿命が3ヵ月のデジタル時代。
 必要な事ですよね。