カメラと言えば 2002年 |
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日経産業新聞 |
「カメラが足りない」。三洋電気の生産子会社の岐阜三洋電子
(岐阜県安八町)では、生産能力を十倍にしても需要に追いつかない携帯
電話部品がある。今春に月産百万個に増強した小型カメラモジュールだ。
同工場はCCD(電荷結合素子)カメラの生産拠点。
工場ないにあるガラスで仕切られた役五千平方メートルのクリーンルームに
は、ウエハーの加工やチップの組み立て装置などが所狭しと並ぶ。
白い防じん服を着た作業員約五百人が、四班三交代でCCDを
中核とするモジュールを生産。松下通信工業やNEC、シャープなど
携帯電話メーカーに出荷している。年三百六十日稼動で生産に励むが、
先方から要求される量や納期にはとても追いつかない。
三洋への引き合いは能力の二倍、月二百万個程度に達する。
三洋の営業部隊は「平謝りするしかない」状況にあり、来年三月までに
岐阜三洋の能力をさらに倍増する。
携帯電話市場は加入者増の頭打ちや、買い替え需要の一服で
弱含みが続く。第三世代携帯電話も苦戦するが、「カメラ付きケータイ」
だけは別物だ。マルチメディア総合研究所の調べでは、国内で今年度
上半期に出荷された携帯電話機(二千十五万台)のうち、
カメラ付きは33.7%の六百七十九万台を占めた。
同社の予測では、下半期(10月−2003年3月)は出荷台数の
7割をカメラ付き携帯が占め、通期の台数は二千万台超えるとみる。
カメラ付き携帯は2000年秋に登場したJ-フォンの「写メール」で
市民権を得たが、最近の急拡大はNTTドコモの参入が主因。
六月発売の「iショット」は二百二十万台を突破。秋に発売する
主力機種にはカメラが標準で搭載される。
携帯ブームに無縁だった部品メーカーで、特需に沸く筆頭が
レンズメーカーだ。レンズ事業の縮小を余儀なくされてきた国内勢に
とっては、まさに”干天の慈雨”。
コニカはレンズの生産拠点、中国・大連工場の拡張を検討し始めた。
社内では「来春にもレンズ生産量を倍増させ、携帯向けの需要を
取り込むべきだ」との意見も出る。同社の松丸隆執行役員は
「詳細は未定」としつつも、「来年度はデジカメ用ズームレンズで25%、
携帯用でも高いシェアを取れる生産体制にしたい」と意気込む。
同社には携帯の新機種用にズームレンズ仕様ができないかとの
打診も舞い込んでいるという。ズームは最低でも5−6枚のレンズが
必要。正式に受注となれば生産能力の拡大が不可避となる。
東京・板橋にあるカメラ用シャッター最大手の日本電産コパル。
本社の開発チームは今夏から、携帯用カメラ向けのシャッター設計が
主業務の一つになった。設計と試作の繰り返しで、開発チームの
部屋にはいくつものレンズユニットの試作品が転がっている。
「携帯用カメラも高画素化が進みシャッターを搭載するようになり、
来年度も出荷は倍増する」(島田誠社長)とみて、中国・淅江省の
工場の能力を大幅に拡充する。
カメラ特需は部品業界にとって久々の朗報となったが、落とし穴を
懸念する声もある。携帯電話は市場が大きい半面、利用者の趣向も
変化が激しい。NTTドコモのある幹部は「白黒液晶の二の舞いに
ならなければいいが」と、かつての失敗を思い返していた。
2000年の初め。ドコモの「iモード」が急速に普及し、
携帯メーカーは白黒液晶の携帯電話の増産に踏み切った。
ところが半年後、液晶の主流はカラーに一変。
大量の不良在庫を生んだ。
「写メール」を仕掛けたj-フォンの高尾慶二移動機開発部部長は
「常に懐に入り込む携帯電話で、カメラは必要不可欠なパーツになった」
と指摘。カメラは活況は当分続くと見ている。
☆☆☆
景気の低空飛行は続く中でも、生産や販売が絶好調の製品や
サービスが必ずある。情報技術(IT)分野もしかりだ。
(小板橋太郎、三河正久)
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