日本の製造業

 70年代から80年代後半にかけて、日本の製造業の強さの源泉はどこにあったのだろうか。政治や世界経済、内需と言った、複雑な要因をあえて排除し私なりに簡潔に言ってしまう。『日本は他国よりも精密、精細な物を安く大量に作ったからだ』。ホンダは他国に先駆けて、小型で安価なDOHCエンジンの大量生産に成功している。ソニーは小型のトランジスタラジオの開発で世界の注目をあびた。SEIKOはクォーツ腕時計開発でその名を世界に知らしはじめたが、それ以前にも高精度な機械式腕時計の大量生産に成功している。ニコン・キャノンは独製カメラの3分の1以下の価格で、同じ部品点数のカメラを作った。VTRの複雑さは機械工学の枠をあつめた物だが、これを家電製品として安価で身近な物にした。DVDも微細な技術だ。例を上げればキリがない。以上は、既存の一般的な工業製品よりも複雑であり、高機能である。日本企業はこれを安く、大量に市場に投入しシェアを高める事が企業競争力の源泉であるとする、方程式を確立したのである。
 私は今後、日本の製造業が何をすべきかは、はっきりしていると思う。他国より、小さく複雑物を扱うのだ。日本の物造りがすべて精密機械工学の様になればよいと思う。小さな物を作れと言うのではなく、すべて他国より一桁精密な物造りを目指したらどうだろう。精密機械工学にはコンピューター制御がつきものだし、ソフトウエアーやネットワークの技術やインフラも他国に先駆ける事になる。次世代エネルギーやバイオも精密機械工学なしには成り立たない。燃料電池はナノテクだのみだし、バイオも高度な(ノーベル賞受賞の化学者田中耕一氏を見よ、元々得意な分野でもある事だし頑張り時だ。)分析機械なしには、ダメだろう。