鎌倉彫

鶴岡八幡の参道には鎌倉彫の御店が沢山有りました。
どの店も品格ある佇まいで足が向きますが失礼ながら私は鎌倉彫があまり好きでは有りませんでした、どうも中国の漆器である堆朱や堆黒の安物バージョンに見えるからです。
鎌倉彫は鎌倉時代に中国から禅宗と共に伝来した堆朱や堆黒にあこがれて国産化された漆器で有る事は鎌倉彫協会も認める所です。
桂や銀杏の木に紋様を掘りその上に漆を塗り仕上げたもので仕上がりは堆朱に良く似ていますが技法は似て非なるものです。
鎌倉仏師として名高い運慶の孫弟子たちが始めたとの事ですが作品の厳しさにおいて堆朱堆黒に遠く及びません。
紀元前の青銅器の紋様と精神を継承する堆朱とは歴史の長さが違いすぎるのかもしれません。
先日東京美術倶楽部で成城大学教授であり美術評論家の青柳先生の講義を拝聴しましたがその際、鎌倉彫のお話になり「日本的なる物の象徴である」趣旨のお話が有りました。
非常に厳格な中国の物に対して同じような物を作っても日本や朝鮮の物はどこか柔らかでゆるい印象が有り、この際それが国民性であり個性で有り良い所と考える事も出来ると言う様なお話でした。
この個性を極限まで追求した物が茶道具に見る「へうげもの」、例えば織部等の焼き物なのかも知れません。
日本製品は精密で高品質、という概念は長い歴史から見ればここ最近の事と肝に銘じておくべきです、そして今後我々はどの様な個性と哲学で世界と戦って行かなければならないのか考えざるをえません。
今回の旅行で私は鎌倉彫のぐい呑みを一つ購入しました、日本的なるものの開闢前夜、すなわち東山文化の一つ前の時代に誕生した愛すべき鎌倉の精神を土産にしたのです。



















 2014−5−7