汝窯


青磁の最高峰、汝窯の盤です。
しっとりと油分を含んだような落ち着いた風合いは北宋汝窯独特のもので後にも先にも、この時代以外にあり得ない美しさです。
汝窯の製品は世界中に90点程しかなく日本には3個が確認されています。
もちろん写真の盤は北宋時代の物ではなく最近の模古です、大変良く出来ていて所有欲の湧くものです。
贋物ではありません、本歌をリスペクトして製作したコピー商品と言えるでしょう。
そもそも汝窯に贋物など成り立ちません、本物など市場に有る訳がなく本物と信じて買う人などあり得ないからです。
数10年に1度、本物が発見されたとしても業者は市場に出すことなく収まるところに収まるべく直接ビックコレクターとの交渉に臨むでしょう、特別な商品は特別な御客様に、サザビーズにしろクリスティーズにしろ例外ではなく彼らは特別な御客様との特別な関係こそ特別な財産と心得ているからです。
時として彼らに振られるような事が有れば大いに話題作りをした上でオークションに掛けられることになります。
そんな訳で市場に出る訳の無い汝窯を「本物だと信じて買ったのに偽物だった!!」と怒っている人がいたとしたら、偽物はその人自身かもしれません。
写真の商品は葛西神社の骨董市に出店していた中国人業者が三千円の値を付けていました。
「千円なら買うよ」と値切りましたが友人からの委託だから値下げはできないと抵抗します。
ちょうどその時、お世話になっている宮司が声を掛けてきて中国人そっちのけで世間話に花を咲かせてから帰路に着くべく車のエンジンを始動させると先ほどの中国人が慌てた様子で声を掛けてきました。
「友人に連絡したら千円でいいと言っていたから、どうぞー」
有難く頂戴した顛末です。



      2021-3-14