縄文の酒器

何処からどう見ても御銚子とぐい呑みに見えてしまう縄文の土器、ぐい呑みも御銚子も現代人のデザインと言われてなんの違和感も感じません。
九月に松戸市立博物館で催された「縄文人の祈りとメッセージ」は白眉な展示会でした。

私達の祖先が文字を発明したのは約五千年前にさかのぼります、それ以降文字による記録によって私達の歴史がどの様な物であったのか詳細に知る事が出来るようになりました。
しかし私達のルーツは五千年前なんてものじゃありません、約二百万年前に遡る事になります、文字の発明の遥か以前から私達は様々な営みを繰り返してきました、そうした時代を探るには当時の人々が残した物から推察するしか方法が有りません。
積極的かつ想像力豊かに物に接すれば多くの道具達は当時の人々が何を考え何を目標に生き何を大切に考えていたのか雄弁に語ってくれるはずです。

約五万年前に私たちの脳に大きな変化が起きた様です。
私達の祖先は突如として洞窟に絵を描くようになりました、それ以降は粘土に紋様を刻み動物の骨に彫刻を施す様になります。
心が芽生えたのです。
医学的にも脳の容量が現代人と同等になりました、すなわち今の私達とそれほど違わない人たちが誕生したのです。
だから今私達が感じる事と同じ事を五万年前の祖先も感じたに違い有りません。
「家族のだんらんを楽しみ、酒を飲む事が幸せだな」と今私達が思えば、それとさほど違わない事をこの土器の製作者も思ったのに違いないのです。



















   2014-11-27