出光美術館

出光興産の創業者である出光佐吉氏が収集した美術品を展示するのが東京丸の内と北九州の門司に在る出光美術館です。
古唐津や鍋島、京焼などの天下の名品が目白押しです、私は焼き物が好きなのでどうしても鑑賞眼が焼き物に偏ってしまいますが掛け軸や屏風、洋画にも名品が多いようです。
そしてこの美術館のもう一つの目玉が陶片室の展示だと思っています。
陶磁史研究において大きな業績を残した、小山富士夫と三上次男の蒐集した陶片が常設展示されているのです。
小山富士夫は中国宋代の銘窯、定窯の窯跡を発見した事でも有名でその時採集された資料を出光が受け継いでいる様です。
定窯以外にも建窯や磁窯の陶片が充実しています、国産では中世六古窯の資料を数多く見る事が出来ます。
三上次男は中国古陶磁器の調査を中東地域で行いエジプトフスタート遺跡調査からここに端を発する東西貿易ルートを解明し「陶磁の道(海のシルクロード)」という概念を確立させました。
こうした二人の巨星が収集した資料ですから、この上なく信頼性が高く私の様な古陶磁器蒐集家にとって最高の参考資料になるのです。
一般的な博物館や美術館の展示では、ここまではっきりと高台のみを数多く陳列する事はありません、美を堪能してもらう為の展示で調査研究ではないからです、しかし骨董蒐集家はコレクションの真贋に決着をつける為の違った見方が必要なのでありその際の一番信用できる資料は本物の陶片以外にありえないのです。
自身がビックコレクターの出光佐吉氏はその辺の事情を誰よりも分かっていてこの様な陶片室を用意してくれているのでしょう。
私はこうした陶片をじっくりと観察して時に谷底に突き落とされかの様に落ち込んだり時に舞い上がらんばかりに喜んだりしているのです。
そんな訳ですから、もし陶片室でひとり言の多い挙動不審者を見つけてもけして恐れる必要はありません、私に限らず話しかけてみれば案外良い奴が多いですから安心してください。(自分で言うな!)

建窯窯跡に大量に廃棄された天目の陶片の発掘現場

建窯の陶片資料



   2015-10-9