藤平伸

中学2年生の4月に父と京都旅行をしたことを思い出している。
なぜ今更ことのほか懐かしいかと言うと今年の4月に長男が社会人一年生になった、挨拶をかねて修行先の京都の和菓子店を訪れたからである、図らずも二十二歳になる息子との二人旅となった。
父は私に比べれば晩婚であったからちょうど同じ年ごろに長男と京都旅行に出たことになる。

昭和50年の4月、私はその年のお年玉総てを握りしめて京都にいた、そして買い求めたのが下の写真である。
なぜだか陶器を買いたくなった、しかも予算不足だがどうしても欲しい、店員さんが藤平先生に電話で掛け合って
「中学生なのにこんなものを欲しがっている、、見所があるから売ってやったらどうか」などと御世辞交じりの交渉をしてくれた事を思い出す。
たしか半額ぐらいで買ったのではなかったか。
親父は笑いながら見ていたが今考えれば少し出してくれてもよさそうなもんである。

いま改めて下の皿を見てどう思うのか。
その後それなりの人生経験を積んだつもりだし審美眼も鍛えたつもりである、そして今この皿を見てどう感じるのか。
「悪くないじゃないか」
今まで良いと思っていた物がある日突然とんでもない下手物であることを発見することは多々ある、しかしこれは今見ても良い。
中学二年の時の目が今の自分の気分にも適っている。







藤平 伸  略歴
1922 京都東山五条坂に生まれる         
1944 京都高等工芸学校に入学
病気のため中途退学
1957 第13回 日展にて特選・北斗賞受賞
1960 イタリア・フィレンツェ国際陶芸展
1963 第6回新日展にて菊花賞受賞
京都府文化功労賞受賞
1968 現代陶芸の新世代展
陶芸の現在ー京都から展
1970 現代の陶芸ヨーロッパと日本展
発動する現代の工芸1945-1970・京都
1973 日本陶磁協会賞受賞
1974 中南米巡回展

1976 東独巡回日本陶磁名品展
1978 西ドイツ巡回日本陶磁名品展
1982 アメリカ・カナダ巡回展
1983 現代日本の工芸展
1985 現代日本美術の展望展
1990 京都美術文化大賞受賞
1991 京都市文化功労賞受賞
現在 日展会員・京都市立芸術大学名誉教授
                               2010−5−4