電源スイッチ
 電源スイッチの無い最近のコンピュータ周辺機器について考察したい。
 工業製品において、その価値を高める手法の一つに、部品点数の削減がある事は以前に述べた。これは、商品の信頼性、耐久性、コスト削減を達成する、古典的な手法で、これら3つの要素は全て、価値の向上に有効である。次に、博物学的に過去の著名な工業製品を考案すれば、技術史上も、部品点数を極力少なくして巧みに設計された物の方が、評価が高い傾向にある。これは、歴史的に高機能よりも(高性能と言ってもよい)長寿命な物の方が、評価が高くなると言う、傾向の裏付けと考える事が出来る。
 今日のPC周辺機器の高性能、多機能は、CPU+ソフトウェアによって達成された物だが、部品点数の削減も同時に達成していると言う点で今日的である。新世代の機器と言える。長寿命であるかないかは、意見の別れる点であるが、PCのパレート的技術進歩や、目をみはる進歩の速度から、あまり問題とされていない。PCと連携している以上、PC側の都合(規格)に左右されるし、その都合が変われば、周辺機器も、おのずと変わらざるをえない。そこでは、かつての様な、数年あるいは数十年単位での商品寿命など、無意味と言える。また、周辺機器に付属するドライバー、ソフトの進歩が、ある程度更新と言う手法で進化させる事が出来るので、商品寿命の意味もかつてとは違った物になっている。話が元に戻って、工業製品に使用されている部品点数を、歴史的視点で考察してみると、同じ価格帯で、同じ使用目的の製品の場合、高機能、多機能(以後、単に性能)になる程、部品点数は増えている。性能の向上は、そのまま時間の経過に比例するので、最近の物になればなる程、性能が向上し、部品点数が増えている。逆説的に言えば、性能が向上する為には、部品がたくさん必要であると言うことだ。そして、これらの複雑な機械を、大量生産出来る製造業が育っていると言うことが言える。
80年代ME化、そして最近の家電に象徴される、コンピュータ化によって、部品点数は大幅に削減された。いずれは、他のあらゆる
耐久消費材にコンピュータ化が波及するであろう。今現在、その最先端を走っているのが、PC本体であり、その周辺機器なのである。価格競争の激しい分野でもあるので、いち早く、今までの常識をくつがえすような合理化が行われているのである。
 私の所有するスキャナーも、プリンタも、一切操作ボタンがなく、電源スイッチすらない。全てはPCのディスプレイ上で行う。その操作は複雑極まりなく、同時に多機能である。これらを既存の機械的、物理的なアナログ操作で行おうとすれば、かなり大型に高価になるであろう。
そう言った意味でも、昨今の機械はパレート的と言える。