不具合予防処置

 極限までのコスト削減のしわよせであろうか。デミオにリコールが発生した。もちろんマツダ本社及びディーラーの対応は迅速かつ適切なものでなんの不満もない。工業製品にこうした事はつきものだ。

(株)淡平様
ご愛用車のサービスキャンペーン(不具合無償修理)実施のお願い
謹啓
 時下、お客様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
  平素はマツダ車をご愛顧いただき厚くお礼申し上げます。
  さて、ご愛用車におきまして、ISCバルブ(アイドルスピード・コントロールバルブ)の材質が吸気管の温度環境に対して不適切なため、走行後エンジン停止した際に当該ISCバルブが熱膨張し、周辺に堆積した不純物を介して固着する場合があり再始動後にアイドル回転数が不安定となり、エアコン等の負担がかかるとエンストすることが判明致しました(尚、エンストしても再始動は可能です)。
  ご多忙のところ、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。心からお詫び致しますと共に、対策品と交換させていただきたくお願い申し上げます。
  つきましては、ご愛用車の自動車検査証(車検証)に記載されている車体番号が、ご案内しておりますはがきの宛名の下方に記載されております車体番号と同一であることをご確認の上誠に恐縮ではございますが、ご購入いただきました販売会社又は最寄のご愛用車取扱い店舗のサービス工場へご来店いただき、無償修理をお受けい ただきますようにご案内申し上げます(所要時間約1時間30分・・・但し、実際のお預かり時間はこれよりも長くなることがあります)。
  誠に勝手ではございますが、あらかじめのお客様のご都合のよい日時をお聞かせ願えれば幸いと存じます。
 マツダ車の安全確保と品質の向上に、一層努力する所存でございますので今後とも末永くご愛顧賜りますようお願い申し上げます。敬具 
製造元:マツダ株式会社
特約販売会社:株式会社 関東マツダ 東京事業本部

 数年前リコールかくしでゆれた三菱自動車。経営の屋台骨をゆるがし、社会問題にまで発展した。お話するまでもなく、問題は欠陥をひた隠しにして、消費者を裏切った事にある。ある意味消費者は純情である。多くの場合車の事に関しても、車業界に関しても無知なものだ。他の業種を生業としていれば当然の事である。だから、人は業者を信じて車を買うより方法がないのである。この純真無垢な消費者をコケにすれば、あれ程大きな会社でも経営基盤の交替がおこるのである。雪印にしても同じ事だ。消費者をバカにしてはいけない、今はIT社会なのだ。工業製品にリコールはつきものだと書いた。
  私のエッセイをお読下さっている方はご存知の通り、私は一時期、機械部品屋に勤めていました。TV・VTRの担当でしたが一部コピー機の部品も扱いました。日本最大のカメラメーカーの製品、世界の一流品です。レンズ・プリズムを止める、止め金でしたが、これが半年に一度、設計変更になるのです。裏返せば、今までの物では何らかの不具合があると言う事です。こうした細部の設計変更を繰返し、工業製品は信頼性を高めてゆくのです。カメラの話をします。ニコン製一眼レフのフラッグシップF4は初期の物と最後期の物とでは、中身はまるっきりの別物と聞きます。
  カメラオタクオヤジに「今度カメラを買うんだけど、何がいいと思う?」と聞いたとします。カメラオタクオヤジ(つまり私の事だ)はこう言うに違いありません。「フラッグシップ機でロングセラーモデルの最後のロットの物を買いなさい。」そのメーカーを代表するフラッグシップ機でなければいけません。なぜなら、普及機はコスト削減に腐心してかえって品質を落とす事があるからです。”初期のモデルは長持ちしたが最近の物はすぐに壊れる”よく聞くフレーズですが、これはたいてい普及機です。
  マツダの話に戻します。デミオの場合、日本一の大衆車ですから、過剰なコスト削減が悪い方向に出てしまった一例でしょう。なにしろ新聞折込みチラシを見るたびに価格が下がっていた時期に購入した物です。繰り返しますが、私は今回のこの件には少しも不満は感じていません。何度も言います。ディーラーはまことに適切な対応をして下さいました。”ありがとうございます。”ところで送付されたハガキのタイトル。”不具合予防処置のご案内”言いえて妙ですね。