デフレ
なんでも安い物の方が良いとする昨今の風潮は、疑問も多いが、
本当の所、大だすかりである。
昼食が280円であがってしまったり、外歩きにそれ程はずかしくない服が
1000円そこそこで買える。
デフレ経済は基本的には大衆に有利である。
地価の下落が銀行経営を圧迫、続いて中国ファクターによる産業の空洞化、
つまり設備投資と雇用問題さえクリアー出来ていればの話ですけど。
(少し虫がよすぎますか?)
大なり小なり今の日本人は安物買いを楽しんでいる側面があります。
ディスカウント店や100円ショップの盛況ぶりがそれを物語ります。
もっとも小商業におけるディスカウント店の一人勝ちは日本だけの事では無くて、
アメリカも同じだそうです。
最近はリーズナブルな物をオシャレに使いこなす事が知識人のステイタスです。
一方で安かろう悪かろう品も、昔以上に目立つ様になりました。
くつ下やTシャツには破壊的な品質の物も少なくありません。
結果的には高く付く物も多いのです。
秋葉原のディスカウント店で購入したクツ下の品質の高さには感動しています。
日本製である事を強調し、製品元の社名もロゴも大きくかかれています。
(少々アカヌケませんが)
価格は激安と言う訳にはいきませんが充分に安く、リーズナブルと言えるでしょう。
一年近く長持ちしました。
私はリピーターになって今年また、秋葉原で購入したほどです。
やはり物造りはこうでなくては。
お客様に品質で感動をあたえなくては、なおかつリーズナブルである事。
日本で売れてる日用品はすべて中国製になるのではないかと一時は本気
で心配しましたが、このメーカーとの出会いは決してそんなことはなさそうだと言う。
ある種の実感を得るのに充分でした。

5足で780円


少し話は違いますが、不況と言われるタオル業界で次の様な努力を
行なっている日本メーカーが在る様です。


日経ビジネス2003年1月20日号より。

池内タオル(タオル製造)
じり貧業界の元気印企業


安い輸入品に苦しむタオル業界で、海外に活路を見いだし急成長へ。
徹底した環境と品質へのこだわりが、米国の消費者からの支持を獲得。
製品力向上経営改善のために、次々と業界の慣習を捨て去った。


中国など海外からの低価格な輸入タオルがもたらしたか買う競争で消耗した
国内タオル業界で、価格では勝負せず、成長する企業がある。池内タオルだ。
池内タオルはタオル業界では異例とも言える海外展開で成長の種を見つけた 。
2002年11月に米国の50店舗で自社ブランドの商品が販売され、今年2月から
ロンドンとパリの20店舗で販売される。「2月には、米国であと100店舗が取り扱
いを決めるのでは」と池内社長は意気込む。
売上高は二〇〇一年2月期で約7億5000万円。じり貧のタオル業界で黒字を
確保し、2003年には海外での売り上げとして約80万ドルから120万ドルが加わる
見込みだ。今後海外での売り上げは急増すると見られている。
海外取引急増のきっかけは2002年4月に開催された全米最大規模の生活用品
展示会で「ベストニュープロダクトアワード」という賞を受賞したことだ。この賞は、
出店した世界32カ所約1000社の中から5社だけに与えられる。受賞後池内タオル
は米企業5社と取引を決め、30社からの商談の申し込みを受けた。
もっとも、受賞するまでの道のりは決して平坦ではなかった。
日本のタオルメーカーは、低価格の輸入タオルに押され、縮小の一途を辿っていた。1980年代前半は6000〜8000トンほどだったタオルの輸入量は、2001年には
6万3000トンに膨れ上がり、国内で流通するタオルの約60%が輸入品となった。
日本タオル工業組合連合は2001年に繊維セーフガードの発動を要請したほどだ。
結局、昨年10月、発動は見送られ、輸入品流入は、今も止まる様子はない。
池内タオルが本社を置く今治市はとりわけ深刻な状況だ。というのも今治市は、
国産タオルの約59%を生産し、タオル製造に携わる企業数は約65社と言われる
タオルの町だからだ。
ピーク時の1980年代後半は今治市のタオル生産額が700億〜800億円、
生産量も約5万トンだったが、減り続け、2001年は生産額が約333億円、
生産量が2万3000トンに落ち込んだ。
池内タオルも例外ではなかった。1993年、工場内では異変が起きていた。
当時の様子を「見本工場」と池内社長は表現する。つまり、問屋小売店は
池内タオルに見本だけを作らせ、生産は安いコストで中国など海外の工場に
委託していた。時間と人をかけてタオルのデザインを考案しても、発注は一度
きりだった。
池内社長の胸の内には悔しさとともに「海外の工場でも生産可能なタオルを
作っていた」と反省の念がわいた。そこで自社しかできない高品質タオルを作り、
その価値を消費者に認めてもらうしかないと、腹をくくった。


質を上げるため慣習も捨てた

この決意はすぐに行動で示した。池内タオルの製品を見本にして、海外で生産
させた問屋とすぐさま取引を打ち切った。生産量の約65%を扱っていた問屋とも
縁を切ったため、売り上げは約3割落ち込んだ。
業界の慣習も捨てた。とりわけ今治市は、タオル製造の専業化が進み、
糸を染める、染めた糸を織る、織ったタオルを洗浄するという主な3つの
生産工程を賄う多数の専業工場が存在する。専業工場は複数の工場と
取引をし、地場産業は成り立っていた。
しかし、池内タオルは品質にこだわるモノ作りに応じてくれる工場とのみ
取引をしようと、複数の糸加工工場との取引を1社に絞った。
織加工が専業の池内タオルは柔らかいタオルを作るために、使用する糸を
細くして柔らかいワイシャツ用の高級な糸に変えた。だが、タオルはそれだけでは
柔らかくならない。
柔らかくするには糸の染色時に用いる糊を、織った後に洗い落とす必要があった。
そこで糸加工工場に洗浄しやすい天然糊の使用を要請した。
通常は、糸加工では科学糊を使う。天然糊は高価格なうえに手間がかかる。
水に薬を混ぜてできる化学糊と比べ、天然糊は糊と同量の水を用意し、
固まらないように炊き上げる必要があった。
洗浄加工にもこだわった。他のタオルメーカーと2社で専用の洗浄加工工場
「インターワークス」を約35億円の総工費をかけて建設した。
「この工場はブラックボックス」と池内社長が言うように、2社が独占使用し、
他の工場と取引していない。
目的は他社との差別化だ。今治市は、1つの工場が多くの工場と取引するので、
技術が漏れ伝わることが多かったが、この工場ではそれを防ぐ。
もちろん工場では品質向上に納得いくまでこだわった。通常は箱に詰めたまま
洗浄することもあるが、この工場はドラム缶型の大型洗濯機で、丁寧に洗う 。
また通常では水道水を使うのが一般的だが、この工場は地下80mから出る
わき水を使う。
わき水は水道水よりマグネシウムやカルシウムなど糸を硬くする成分が少ないからだ。
実際にタオルは柔らかくなった。高さ70cmの箱に100枚のタオルが入ったが、
箱を7cm高くしなければ、入りきらないほど弾力性が増した。
ただ、コストは膨らんだ。しかし価格を吊り上げては、売れない。
そこで池内タオルは、効率化を追求した。
まず自社でクイックレスポンスのシステムを構築。システムを関連工場に持ち込み、
生産工程を把握し、生産の無駄を省いた。
従来のタオルの製造に45日かかったが、28日まで短縮。今後は21日まで短くする
計画だ。タオルは1日在庫に滞留するだけで約300万円弱の資金を要するため、
17日短縮で約5000万円のコスト削減になった。
販売先との取引も業界の慣習をを捨てた。
従来の取引は契約書がないのがほとんどで、曖昧な発注で生産し、
工場には常に在庫があった。池内タオルでもピーク時の1993年には
数億円分の在庫があった。
そこで契約書を交わした企業とのみ取引し、在庫削減に挑んだ。
しかし、業界破りの取引に応じる企業は少なく、大半の取引先を失った。
この苦境を救ったのは、品質だった。タオルの品質の高さが評判になり、
海外ブランドのハンカチサイズのタオルを中心に、多くの企業にOEM供給
するようになったのだ。
その結果、95年には黒字転換を果たした。そして2000年、大きな転機が訪れた。
たまたま米国ロサンゼルスのトレードショーに参加する機会に恵まれた。


「環境」武器に米国で活路

米国のバスタオルの平均価格が約10ドル。一方、池内タオルの価格は3倍を越える
35ドルと高いために、大きな注文は入らなかった。
しかし、「ミラクルソフトネス」と評判は良かった。
ほかにも池内タオルは米国に手応えを得た理由があった。
米国ではライバルとなるタオルのブランドが少ない。
また日本とは異なり、米国人はタオルを贈答品として用いる事はなく、
ほとんどが家庭用だ。
1つのブランドが気に入れば、家中のタオルを同一ブランドに揃える傾向もあった。
しかも、米国企業との取引は契約書が存在し、工場は在庫に悩まずに済む。
発注はうれてからになるが、QRに取り組んでいた池内タオルは、
発注後のすばやい納品も自信があった。
ただ、高品質をうたうだけでは弱いと考え、売り込み方に知恵を絞った。
そして辿り着いた差別化のキーワードが「環境」だった。
米国では無農薬野菜を扱う飲食店も増え、ブームがおきていた。
実際、自社の環境対策に自信もあった。インターワークス設立時、
世界一厳しいという瀬戸内海への排水処理規制もクリアした。
工場からの排水は「海水より透き通っている」とインターワークスの
芥川記専務理事は胸を張る。
もちろん、環境問題を考慮していると宣伝するだけでは差別化にはならない。
そこで池内タオルは環境に取り組む姿勢を示すお墨付きを求めた。
1999年にタオル業界で初となるISO14001を取得していたが、2000年に
ISO9001を取得。
ISO14001は現在もタオル業界では2社、ISO9001は池内タオルのみだ。
2000年10月には、オーガニックタオルがエコテックスというスイスの認証機関のテストで、
最高レベルのクラス1を取得。
クラス1はタオルを幼児が口に含んでも安心と保障している。
認証は1つ取るのに約200万円から1500万円かかった。
しかし、池内社長は満足しなかった。
「外国人により分かりやすい取り組みがあるはずだ」と考えた。
そんな時、ソニーの風力発電による電力の購入の開始を伝える新聞記事を見つけた。
これだと感じた池内社長は、風力発電による電力は通常より約2割高価だが、
契約した。
年間10万キロワットから購入できる小口契約の第1号となり、使用する電気は
すべて風力発電による電気となった。
池内タオルの直営店や展示会場に、外国人にも分かりやすいよう
必ず風車の模型を置き、「風で織ったタオル」とアピールした。
思惑通り「環境」というキーワードは評判になり、冒頭の賞の受賞につながり、
成長の可能性をもたらした。
価格に訴えるだけのデフレ処方箋ではない。自社の強みを生かし、
顧客の要望を最大限に汲み取れば、価格競争も乗り越えられる。(飯泉 梓)