デジタル家電
 デジタル家電と騒がれる様になって久しい。
全ての家電製品がインターネットに接続されて、電子レンジでホームページを見たり、出先から洗濯機を操作したり、冷蔵庫の在庫状況を携帯電話で確認したりする様になるのだと言う。なるほど便利な様だが、果たして本当にそんな機能が必要なのだろうか。大きな会社の冷凍庫じゃあるまいし、冷蔵庫内の在庫など、出先から確認する程のものとはとうてい思えない。こう言った事を “過剰品質” と言うのである。
多機能化する最近の家電製品に一般人が使いこなせない、あるいはあっても使う必要などない機能が多すぎると感じているのは私だけではあるまい。総じて今の家電製品は “過剰品質” なのである。
有名な笑い話がある。
高名な科学ジャーナリストが新築したばかりのビル・ゲイツ宅におじゃましたそうだ。彼はゲイツ氏の家にあるVTRの時刻設定が間違っている事に気付く。後日友人に彼は言ったそうだ。
「彼もたいした事ないよ。私と同じで、VTRの時刻設定が出来ないみたいなんだ。」
そんなわけで家電などと言う物は、一部のマニアを除いてだいたいこんな使われ方をしているものなのである。こう考えると、どこぞの国の元総理大臣が提唱する、インターネットバージョン6なるものもあやしく聞こえてくる。
日経新聞の記事を読んで、最近考えが変わった。
家電企業はインターネットに接続される製品を売る事によって、販売後も長期に渡りモニター出来る様になると言うのである。これによって、販売された製品がどの様な使われ方をしているのか今まで不可能であった、正確で子細な情報を手に入れる事が出来る様になる。地域による差、購入者の年齢による差、よく使われる機能などなど、全ての製品に対して調査する事が出来る。これらの情報は、以後の最適化された製品設計に大いに役立つに違いない。これは製品設計に加速度的な進化をもたらす可能性がある。同時に遂日モニターする事によって信頼性工学を適用、あらかじめ故障の個所と時期を予測できる可能性もある。今の信頼性工学はかなり完成されていて、各部品の寿命を的確に予測出来るからである。これらの技術とモニターによる情報から、残りの製品寿命あるいは部品の寿命を計算するのである。これによって、致命的な故障の起る前にユーザーにアナウンスし、メンテナンスを行う事によって、製品寿命を革命的に延ばす事が可能になるだろう。
新製品の販売量は減少する事になるが、家電リサイクル法が施行される今日の世相には合っている。今、修理部門は利益の出ない赤字部門と言われているが、今後はこの修理業務によって利益の出せるビジネスモデルの構築が急務となるに違いない。
といった内容である。
想像してほしい。愛車のダッシュボードのかたすみにUSBによく似た端子が付いている。携帯電話をつなぐと自動的に自動車メーカーの大型コンピュータに接続される。車に張り巡らされた、センサーやCPUに瞬時にアクセス、データ分析が行われる。そして数分の内に車検が終処するのである。
自動車メーカーの大型コンピュータは、たどたどしい日本語で、最後にこう言うにちがいない。
「お客さん そろそろ買い替えの時期ですよ。
今でしたら決算月です。
お安くしときまっせー。」