アメリカ企業における軍とCIAの役割

 CTIを御存知だろうか?
Competitive 競争による
Technical 専門的な、技術面の
Intelligence 理解力、知能、知性
これらの頭文字を取ってCTI。
CTI=競争的技術能力開発
 米国発祥の経営支援ツールである。企業はたえまない競合他社との競争につねにさらされている。他社に不意をつかれない為にもたえず効率的な情報収集、分析を行なわなければならない。CTIはこれら手法の一つなのである。Intelligenceとは何か。企業が断片的に収集する情報は初期の段階ではたんなるDataである。
Data:事実、数字
 これを整理統合させたものがInformation:整理されたDataである。これだけではなんの価値もない。(0ではありませんが)ここに分析と解析が加えられ意思決定を支援する情報がIntelligenceなのである。
 CTIの定義(日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科第一回セミナー試料より)
・CTIは投資あるいは技術資源の活用に影響を与える意思決定をサポートするために用いられる分析された情報。Jay Paap
・CTIはCompetitive Intelligenceのサブセットである。これは環境(競合他社)の技術的、科学的な様相に注意を向けるものである。CTIは将来の技術が今日どこで作り出されているかを知っている会社が競合上の優位に立つという原則を具体化するものである。National Research Council、Canada
・CTIはCompetitive Intelligenceの下位の学問分野である。Technical Intelligenceは技術志向の組織が、その産業界において競合上の優位性を獲得しようとする際に非常に重要な役割を担っている。ITに直接関連するトピックとして、特許分析 技術予測 戦略的な研究開発計画 ライセンシングや買収 競合相手の技術プロファイルの作成などが含まれる。America Chemical Society
・市場・技術調査とは異なりTechnical Intelligenceはビジネスに影響を与える全ての重要なファクターに関して、常に自分を最先端から遅れないように保つための、継続的な作業である。不意をつかれた後に反応するのではなく、問題や機会をあらかじめ予想(予測)することができるように、事前の警告を与えてくれるものである。Rowan Technology Group
・CTIは法に従い、倫理にかなった方法で(米国において産業スパイ容疑で検挙される日本人研究者が意外と多いようです)他の組織で行なわれている活動情報の収集・整理・分析・解釈を行うことである。このプロセスにより、自分の組織が競合上の優位にたつことが期待される。Pat Bryant
・CTIは自分の企業(組織)の外で起っている科学的、技術的な開発やトレンドに関する入手可能な情報の最良のものを収集・解析・伝達することである。David Colborne
What is CTI?
Conpetitive競合他社
Technical技術開発
Intelligence 情報の収集 解析 解釈
→技術開発戦略の策定
これらの具体的なテクニックである。
 具体的なプロセスとして 市場ファイルの作成 製品市場のセグメントの選択 技術ー市場相互作用マップ作成 技術投資先の検討 プロジェクトの選択とプライオリティーの設定などがあげられます。グローバル社会になり、以前にも増して情報の重要性がさけばれています。情報からIntelligenceが生まれ世界市場で勝利していかなくてはなりません。IT社会になりアメリカ企業が他国をリードしているのは、技術的優位性のみではありません。他国より上手な情報収集能力に負う点が大きいのです。冷戦の終結によって大量のCIA・KGBのスパイが失業したと言われています。元々がスーパーエリート、情報にビンカンなこれらスペシャリストが再就職できないはずがありません。大半が民間企業に吸収された様です。さらに社会不安にあえいでいた旧ソビエトからも多くの元KGBが渡米しているようです。アメリカ企業が情報社会、IT社会で世界をリードしはじめた時期とも合致している訳で、冷戦終結がアメリカ企業に追い風がどうかと言う疑問に一つの解答をあたえている話です。
 もちろんこれだけが理由ではありません。政府の政策 魅力的な大学 優秀な移民 強大な軍事力などなど。CTIに代表される様な手法でアメリカ企業が優位にある事が良く解る事例を挙げましょう。日本大学大学院グローバルビジネス研究科が主催するセミナーにおいて、アメリカ人 Jay E.Paap教授が招かれました。氏はPaap Associates Incの社長のかたわらカリフォルニア工科大学、インダストリアル・リレーション・センターで教鞭をとっています。元々が米軍の技術者であったそうです。氏は25年以上に渡りビジネスや製品開発、戦略的提携、技術マネジメント、コンペティブ・インテリジェンスに関する世界的なプロジェクトに関りました。あるプロジェクトにおいて、氏は競合他社が何を作っているのか、何を作ろうとしているのかを知る為に、人口衛星の写真から排出されている化学物質を分析し、敵の行動をあらかじめ予測する事に成功したそうです。氏のプロジェクトは敵に不意をつかれる事なく成功したのだと思います。アメリカ企業の強さの一端がかいま見える話だとは思いませんか。収集されたDataはCTIによって有機的に統合、整理され業界制覇にむけて活用されるのです。