中国製造業の真打ち
ハイアール、レジェンドなどの家電製品の日本上陸に日本のメーカーは動揺している。
しかしどうやら真打ちは他の所にいたらしい。


以下 日本産業新聞 2002、11,28 より

中国製造業の「真打ち」来る

中国の大手通信機器メーカー、華為技術の日本市場への進出が、日本の通信機器業界に衝撃を与えている。華為はインターネットに不可欠のルーターの生産で「第二のシスコシステムズ」と呼ばれる技術力とコスト競争力を持つ。わが中国製造業の「真打ち」で、日本企業は中国企業と本格的に競争する時代を迎えつつある。
 「華為がいずれ日本にやって来る。それまでに我々が競争力をうけられるかどうかが、生き残りのカギを握っている」。今年の夏、NECで通信機器を担当するネットワーク・カンパニーの幹部が、こう社内に激(げき)を飛ばした。
 この幹部はまだ一、二年先をそうていしていたようだが、華為は待ってはくれなかった。先月、日本に事務所を開設する一方、兼松との販売提携で年内にも日本でルーターなどの販売を開始することを明らかにした。
 華為は広東省・深センに本拠を置く私営企業。昨年の売り上げは二十四億j(約三千億円)で、純益は五億j超。中下位のルーターや携帯電話の基地局設備が主要商品で、中国国内だけでなく輸出も急速に拡大している高収益企業だ。
 広東省政府が発表した同省内の企業競争力ランキングでは、日本でも知られる家電のTCL集団などを抑えてトップに位置する。米フォーブス誌の米国外の世界の非上場企業ランキングでは、中国企業の代表格としてリストに入った。 
 NECや富士通など日本の通信機器業界は、かつてのNTT向けの局用交換機の需要が激減したため、国内工場をインターネット関連機器の生産へと転換しつつある。ルーターはその最大の戦略商品で、各社とも工場の生産ラインの整備や生産効率の引き上げに取り組んでいる。 
 そのさなかの華為の対日進出は、大きな脅威だ。
 日本市場はすでに、海爾集団の洗濯機などの白物家電の一部が中国ブランドのままで流入れしている。だが家電の分野は、低迷しているとはいえ日本メーカーが付加価値の高い商品をそろえ、ブランド力も持っている。海爾などの参入は、一般に騒がれてたほどの衝撃ではなかった。
 それに比べルーターでは、華為が日本勢をリードしている部分も多い。華為は中国企業としては例外的に、売上高に対する研究開発費が10%を超えるなど、日本企業並みに研究開発に力を入れている。低価格を武器に市場に参入してくるこれまでの中国企業とはまったく異質といえる。
 今後、中国市場で成長し海外に出てくるのは、華為のような研究開発型企業である可能性が高い。華為の対日進出への対応は、日本企業にとって重要な試金石となる。
 こうした中国製造業の「真打ち」とどう戦うか。中国に生産拠点を移しコスト削減を目指すのはひとつの選択肢だ。ただ、中国側のホームグラウンドで戦う不利は否めない。日本の拠点で生産リードタイムを縮小し市場への対応を早めることや、細かな顧客ニーズに応えるための多品種少量生産を確立することも、ひとつの解答にはなる。
 だが、中国市場の攻略まで視野にいれるなら、華為そのものや「第二、第三の華為」など、中国メーカーとの合従連衝も欠かせない戦略となる。自社の二輪車のコピーメーカーの生産技術を評価して合併相手にしたホンダは、好例だ。
 中国企業がライバルとして現れたとき、自らの弱点を中国企業を使って補う柔軟さこそ、対中ビジネスのカギかもしれない。
(編集委員 後藤康浩)