AVメーカー連合結成目指す
2002,12,16 日経産業新聞
中堅AV(音響・映像)機器の日本マランツとデノンが経営統合した
ディーアンドエムホールディングスが国内オーディオ連合の結成に動き始めた。
かつて世界にナを響かせた日本のオーディオ機器メーカーを集め、
復活を目指す。
「プレミアブランドを買収し、事業拡大を進める」。
四日の九月中間決済発表の席で株本辰夫社長は、
国内で高額オーディオ機器を生産する
企業の買収を、中期的な事業計画の基本に置いていることを明らかにした。
五月の経営統合以来リストラを実施してきた同社が、
反転攻撃に出ると宣言した瞬間だった。
経営統合からの半年あまりは、日本マランツとデノンが先送りしてきた課題を
一気に解決する期間だった。統合前の一月一日時点で千六百四十七人だった
従業員は、 九月末で千四百四十一人と十三%減った。三ヶ所あった
国内工場は福島県白河市の一ヶ所に集約。
楽器など木工製品を採算していたコロムビア音響工業の売却も決めた。
リストラの成果として、九月中間期では六億(連結ベース)の連結純利益を
確保した。
マランツが二〇〇一年十二月期に三十四億円の最終赤字に陥り、
日本コロムビアのハードウェア部門だったデノンも二〇〇一年三月期で
十二億円の最終赤字だった状況とは様変わりだ。
今後も二〇〇五年三月末までに、二百人の人員削減や十八ヶ所ある
国内営業拠点の三ヶ所への集約など、スリム化は進めていく方針だが、
リストラ一辺倒の時期は終わり、攻撃に出るための態勢が整ったと言える。
ドイツ銀行とみずほ銀行はこのほど、D&Mへ百八十億円の融資枠
(コミットメントライン)を設定した。この大半を企業買収に使う方針だ。
「国内には、売上高は小さくてもスピーカーなどオーディオ機器の名門で
多種少量生産に強い 技術力を持つメーカーが多い。そんな企業と一緒になり、
ブランドと技術力を生かして海外メーカーと戦っていく」。株本社長は力説する。
D&Mの筆頭株主は米投資会社リップルウッドで、続く株主はオランダの
電機大手フィリップス。
外資の大株主が経営陣に向ける目は厳しい。
決済発表のあった東証の記者会場の片隅には、
リップルウッドが派遣した担当者が陣取り、D&M役員と記者のやり取りに
割り込んで説明を挟む場合も見られた。
企業買収で事業を拡大する戦略は、こうした主要株主たちの賛同を得ている。
米モトローラーの元役員でリップルウッドがD&Mに送り込んだ
メール・ギルモア会長は
「日本に限らず世界規模でAVメーカーを買収し、技術力を高めていくべきだ」
と語っている。
優れたアナログ音響技術を武器に世界市場で高い競争力を誇った
日本の名門オーディオメーカーは、デジタルAV機器の普及やアジア企業との
コスト競争などで没落しつつある。
このまま没日と消えていくか、復活の火を燃やすのか。
D&Mのオーディオ連合構想が果たすべき役割は重い。
(村松進)