浅野 陽

神田本店近くにあった現代陶芸の店「壷好」のオーナーが良いお客様であったのだけが理由ではないが4代目はよく壷好に出かけて行って陶磁器を買い求めることが多くなった。
壷好は当時、東京芸大教授であった浅野陽先生の作品に力を入れていて我が家にも浅野作品が溢れることになる。
粋で洒脱な作風は浅野先生の育ちの良さが表れていて、なんでもあの有名な浅野内匠頭長矩の御子孫なのだそう、世が世なら御殿様なわけだ。
抜群のデザインセンスは感じるがどうにも迫力不足なのが当時の私の感想であった。
例えば魯山人や唐九朗に見るようなどろどろした生命力みたいなものは感じられないし波山や憲吉に見るような精密さもない、ようするに私の好みではなかった。
そんな中「これだけはお前が持っとけよ」と父が私に渡し私自身もお気に入りの逸品が写真の大皿。
かわいらしいポンカンがいかにも浅野先生らしい。
1987年に神奈川の工房を先代と尋ねたが御留守だったのは残念な思い出である。
食通の浅野先生は食と器の本を多く著していて昭和の魯山人みたいな人、美味しいお店を幾つも紹介していただいて先代と食べ歩いた、弊社のと金煎餅も先生のアイデアである事は他のエッセイで告白済み。
つくづくお会いしてみたかった。







1923     東京都本郷に生まれる。
1941 18歳 東京美術学校(現、東京芸術大学)工芸科漆工部入学。
         磯谷阿伎良・内藤四郎・富本憲吉・加藤土師萌に師事。
1946 23歳 東京美術学校卒業。
1949 26歳 東京芸術大学講師となる。
1962 39歳 朝日陶芸展入賞。
1963 40歳 日本伝統工芸展に出展。
1966 43歳 新宿伊勢丹にて第1回個展開催。以後、日本橋三越・寛土里・
         壷好にて隔年個展開催。
1967 44歳 日本工芸会正会員。
         神奈川県南足柄に移転、築窯。
1970 47歳 フランス・バロリス陶芸ビェンナーレ展出品、名誉参加賞受賞。
1979 56歳 東京芸術大学教授となる。
         文化出版局より「酒呑みのまよい箸」刊行。
1980 57歳 世界文化社より出版の「和食器の盛りつけの手本」監修。
1983 60歳 講談社より「技法入門シリーズ・陶器をつくる」刊行。
         アメリカ・スミソニアン美術館、イギリス・ビクトリア美術館開催の「日本
         現代陶器展」出品。
1984 61歳 講談社より出版の「現代日本の陶芸第七巻・伝統と創造の意匠」に
         執筆。
         週刊朝日に「浅野 陽の料理三昧」を一年間連載する。
1985 62歳 月間栄養と料理に「食べる器」を一年間連載する。
1987 64歳 福山天満屋にて個展開催。
1988 65歳 文化出版局より「浅野 陽の味知歩き」刊行。
1989 66歳 東京芸術大学陳列館にて退官記念展開催。
1990 67歳 東京芸術大学退官。名誉教授となる。
         講談社より「浅野 陽の世界」刊行。
         日本橋三越にて退官記念展開催。
1992 69歳 講談社より「浅野 陽のやきもの塾」刊行。
1997 74歳 講談社より「新版・酒呑みのまよい箸」刊行。
         8月死去。
                            2010−5−4