70’s
 蚤の市のジャンクコーナーで、70年代のKS(キングセイコー)を見つけた。
かなりくたびれた物だが、かつての名品を3千円で手に入れる事は私のポリシーにも合う。このKSの裏ブタをはずして、中の機械を観察してみる。そして思うのだが、日本の物造りのうまさと言うのは、高品質で、そこそこ複雑、精密な物の大量生産のうまさである。50年代、60年代に培った技術の蓄積が、70年代に開花したのだろう。他国が手造りに近い状態でしか造れない物を、合理的な設計と製造設備によって、大量生産する事に成功した事が、70年代のMade in Japan の躍進につながったのである。実際70年代の物は、世界的に名の通った名品が多い。国産腕時計も、実用品として高品質であったし、カメラもキャノンF−1、ニコンF2ともに精密の極みであった。いずれの物も、かなり大量生産された物でめずらしさは伴なわないが。80年代以後の日本車の世界的に高い評価や、家電大国日本の下地もこのあたりにありそうである。
 2000年前後から、物造りにかつてほどの“たくみ”が必要とされなくたっている。デジタル技術の確立が一因なのであるが、今後日本の製造業が、どこに強みを発揮してゆけばよいのか、多くの問題を投げかけている。